
※汚い話です。前編はこちら
「ここにいたのかね」と満面の笑みで隣に腰を下ろす部長の手には日本酒とおちょこが2つ。
飲み放題の注文ができるのはこれからのはず、、、
その日本酒セットは一体どこから持ってきたんだ。
先日の日本酒の件で完全にロックオンされた私は
再び最後の砦として戦うことを決めた。
飲んでも飲んでも注がれる日本酒。
「部長のおちょこも空じゃないですか」と感情が消えた笑みで注ぎ返す私。
次第に頭がぐわんぐわんしてきた。
頭も瞼も重たい。このままここに突っ伏してしまいたい。
しかし私は最後の砦。
酒に酔った姿を敵(部長)の前で晒すなど言語道断。
耐えろ、耐えろ、正気、正気。気を抜いたら終わりだ。耐えろ――――――。
気が付いたら私は忘年会の会場とは別の居酒屋の前に立っていた。
私の横には同期のハットリ君。
時刻は…なんと終電がなくなる時間だ…!!
タイムワープ後のような私にハットリ君は話しかけている。
「お前、あんなえぐい下ネタ話によく付き合ったな。俺ですら逃げ出したかったわ」
下ネタ…?
あれ、てかみんなは?
私なんでこんなとこにいるの…?
少し先にタクシーを捕まえる部長と数人の上司が見えた。
「ごめん、何も覚えてないんだけど…。これ今どういう状況?」
と恐る恐る尋ねると
忘年会の後、私はハットリ君含めた数人規模の二次会に連行され
そこでもしこたま酒を飲んだらしい。
酒が入った中年オヤジたちの耳をふさぎたくなるようなえぐい下ネタを
眉間にしわを寄せながら真剣に聞いていたらしい。
あれだけ飲んだのにハイヒールでしっかり歩き、背筋を伸ばして椅子に座り
上司のセクハラをものともしない私にハットリ君は感心していた。
とうとうやった。。。忘年会を乗り越えた。。
耐えろ、正気、耐えろ、気を抜くな、耐えろ、集中…
と全身全霊で言い聞かせていた私は集中力で外界をシャットダウンし
誰にも酔っていることを悟られなかったのだ。
少しするとタクシーを捕まえた部長らが戻ってきて、
私は家が近いセント君(せんとくんに似ている偉い人)と乗り合わせて帰宅することになった。
一度正気に戻ってしまった私は思い出した。
酸っぱいものが口の中に広がりつつある恐怖を…。
自分がものすごく酔わされたという屈辱を…。
(ナレーター:アルミン 進撃の巨人より)
しかしここまできて…ここまできて私は倒れるわけにはいかない。
ゴールは目の前。
10分、たったの10分タクシーに揺られれば家に着く。。。
気を抜くな私…耐えろ…耐えろ…
先ほどのセクハラに罪悪感を持っているセント君は気を使って妙に明るく話しかけてくる。
頼む、黙っててくれ…
今集中力を切らしたらこの車内はたちまち地獄と化すだろう。
酔っていること、気持ち悪いこと、吐きそうなこと、全て閉じ込めた私の顔は
恐らくオードリー春日の「鬼瓦」だった。
自宅アパート前の信号が赤になりタクシーが止まった。
私はもう限界を超えており一刻も早く外に出たかったので「ここで大丈夫です!」
とタクシーを飛び降りた。セント君が「えっ、大丈夫!?」と声をかけてきた。
「ここで大丈夫です!!!!!」
鬼瓦はそれしか言えなかった。
もう酸っぱかった。もう口内にいた。少しこんにちはしていた。
しかし私は最後の砦。決して酔っている姿は見せない。
背中に、赤信号で止まるタクシーの中からセント君の視線を感じる。
ここでしゃがみこんでマーライオンになってしまえば全て水の泡。
…限界。
セント君が後ろにいる以上、歩みをやめることはできない。
私はコツコツとヒールを鳴らしたまま前方に狙いを定め、歩きながら前方へ向かって、
吹いた。

歩き続けている私は前に進んでいるのだから
なるべく遠くに飛ばさないと落下前のゲロを浴びに行ってしまう。
普段の頭の回転の遅さが嘘のように、
瞬時にゲロの飛距離と歩きの速度を計算した。
―――今!!! この位置!! このタイミング!! この角度で!!
引用:ハイキュー8巻
噴射後も姿勢よく歩き続け、無事タクシーが去る音が聞こえた。
一気に脱力し、そのあとは千鳥足どころかほぼ踊りながら帰った。
人間、やればできる。
なんだって。

参加してます。
コメント
きったねぇwwwww
それしか言えんwww
だから何回も言ったじゃん汚いよってwwww