【お酒失敗談】ウォーキングゲロ前編

私の誇り高く汚い話をしようと思う。

タイトルでお察しの通り、嫁入り前の女が嬉々としてこんな汚い話をするのはどうかと思うがなんせ自分史上最強に体を張った武勇伝なので是非後世に語り継いでいただきたい。

私は酒に弱くも強くもないが、どれだけ飲んでも全く顔に出ない。

もちろん飲めば飲むだけ酔うが、飲むときは水も適度に飲むよう心がけているため酒に関する大きな失態という経験は一度もないし、しないように気を付けている。

というのも、忘年会で盛大にやらかした同期を見て”絶対にあんな醜態を晒すものか”と心に決めているからである。

社会人になって初めての忘年会、横にいた同期は開始と共にワイン・ビール・日本酒とそれはもうむちゃくちゃなスピードでむちゃくちゃな飲み方をしていた。酔った勢いで上司のグラスを奪うわ大皿料理ごと自分の席に引き寄せ「これ全部私の!」と大声を出すわで地獄絵図だった。案の定彼女はすぐに潰れ、介抱していた私はグラスビール半分も飲めず、彼女の背中をさすりながらトイレの中で忘年会終了の一本締めを聞いた。トイレにいた時間のほうが長い。

会費3,000円払って同期の介抱をしにいったようなものだ。

残念なことに私の同期は悪い意味で全員個性が強かった。

「84円切手の上に10円切手貼れ」という指示を受け、84円切手の真上に10円切手を貼り「84+10=10」を成立させた伝説の同期や、飲み会で上司の乳首をつんつんしたり上司の膝の上に座ったりする淫乱同期。そして唯一まともだと思っていた同期はこの度「飲ませたらやばい女」に昇格してしまった。

このままでは私らの代は変人集団で終わってしまう。
私が最後の砦だ…。

 

12月。
飲み会シーズンが近づくと、本社の盛大な忘年会とは別に部署の小規模な飲み会が開かれた。

そこでうっかり「最近日本酒が飲めるようになった」と言ってしまったばかりに、私は退職するまで部長の餌食となるのである―――――。

もともと私の部署は酒を飲める人間が少なく、普段から酒の席でけろっとしている私はいつの間にか「酒に強いタイプ」と認知されていたようだった。

おちょこが少しでも減ると待ってましたと言わんばかりに部長が酒を注ぐ。飲んでも飲んでも酒が注がれる。飲んでいる最中から継ぎ足す体制に入っている。皆さん、これがアルハラです。

しかし私は最後の砦。ここで負けるわけにはいかない。

だったら私も。
この勝負、私がつぶれる前に部長を潰せば…勝てる…。
飲めば、勝てる。飲まなければ、勝てない。

タイミングを見計らい形勢逆転に成功。

部長に飲ませる為わんこそばのごとくせっせととっくりをひっくり返し続けていると、日頃から部長にこき使われている先輩たちの(いけ!やれ!)(おさしみちゃん、負けないで!)という視線に気づいた。

私は一人ではないのだ。仕事で迷惑ばかりかけても優しく許してくれる先輩たち。。。見ていてください…!!先輩たちのその思い…しかと受け取った…!!!

しかし部長も強かった。
180cmを超える大柄な部長は崩れるどころかペースを上げ、ますます飲ませてくる。水も忘れず飲んでいるとはいえさすがに私もしんどくなってきた。

絶対に酔っている姿を見せてはいけない、私は先輩の思いを背負っているのだから…

と、ここで私に朗報。

「お席のお時間です、そろそろお会計をお願いします」

ナイス、女将!!!!!!!!!!!!

このタイミングで一度トイレに行き、顔を確認した。普通だ。ものすごく普通の顔をしている。ここに来た時と同じ顔だ。少しくらい赤くなれ、お前のせいでこんな目に合ってるんだ。

部長は、というと真っ赤だ。そして楽しそうだ。
「さしみ君はいいなあ、これだけ強い女性と飲むのは楽しいなあ」
と言っている。ちっとも楽しくない。

何はともあれ私は先輩たちの思いを背負い、砦を守ったのだ。

でもこれで終わりではない。1週間後には本社の忘年会が控えている。

忘年会当日。
私は幹事である後輩に席順の細工を頼んでいた。私は普通に飲めればいいのだ。何も勝負の続きをすることはないのだ。気が利く後輩は、私の席を部長から一番遠いところにしてくれた。実際席に座ってみると、大広間を支える柱の陰になって部長の姿すら見えない。完全に部長の死角にいた私は安心した。これでゆっくりおいしいお酒が飲める。と思った。

 

「「「カンパイ!!!」」」の音頭と同時に部長が日本酒を片手に人をかき分けて隣の席に来た。


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