親知らずのリズム

社会人4年目、たまたまレンタルしたトワイライトにドはまりし
私も外国で学園生活をしてそのままイケメンと国際恋愛したい
という極めて愚かな理由でオーストラリアへのワーキングホリデーを決意した。
(ちなみに下心だけで入学した語学学校には、当たり前だがアジア人か中南米の生徒しかいなかった。)

オーストラリアにはとりあえず1年滞在する予定で手続きを進めた。
ビザの用意、現地での携帯や銀行口座の情報収集、海外保険、
そして自身のメンテナンス。

現地の病院は不安、日本で治せる症状は日本で治してから行くべし。だ。

寝起きの顔のブス具合が年々酷くなるという症状以外、自分の体で気になる異変はない。
特に大きな持病もないので手始めに歯の検診を受けることにした。

恥ずかしながら定期健診をやってこなかった私が歯医者に行くのは久しぶりだ。
一通りの検診が終わると歯科助手のおばさまが
「虫歯はないね」
という。ほっと胸をなでおろし椅子から降りようとした私に、おばさまは
「これから海外行くんだよね?まだ大丈夫そうな親知らずあるんだけどどうする?」
と付け足した。
まだ大丈夫そうな親知らずとは…

聞けば右下の奥に親知らずが潜んでいて、生え方の角度的にいつか横の歯にぶつかり
痛みが出てくるかもしれないという。
緊急ではないが海外滞在のうちに痛む可能性も無きにしも非ずということ。
下記はゆるゆるで申し訳ないが、私が友人に求められてもいない歯の状況を説明した際に描いたものだ。

作:当時の私

親知らずか…抜くの痛いらしいし嫌だなあ…
「ん~まあこれからどう生えるかは分かんないから
絶対抜きましょうって感じではないね、私なら抜くけど
とおばさまは続けた。
話をしていると別の歯科助手のお姉さんも来た。
私の状況を聞くと
「確かにねえ~。抜くか抜かないかの判断はお任せします、私なら抜きますけど
と言った。
数分後、私は親知らずを抜くための大きな病院の紹介状をもらった。

早速訪れた大学病院で手術の日程を調整し、再度歯を見てもらった。
※親知らずを抜くというのは「治療」ではなく「手術」らしい。
レントゲンを撮られた結果がこれだ。

…ん?前回の話と違うぞ…?

上にも何かいる!!!!!

なんなら上のヤツのほうがトリッキーな姿!!!
あの歯科医院なんでこんな分かりやすいの見落として下の埋もれてるほう見つけたんだよ!!
すげえな逆に!!!また行くわ!!!ありがとうな!!!!!

それにしても…
この人(歯)の足どうなってるんだ…

そして先輩や友人に「親知らず抜くのは痛いぞぉ~」「頭蓋骨まで振動くるらしいよぉ~」
「ペンチとかドリルとかのこぎり(!?)使うらしいよぉ~」と散々脅されていた迎えた手術当日。
私はあるモノをカバンに入れたことを確認し病院へ向かった。

ちらりと手術台の周りに目をやると、メスや注射器やペンチ。

…ペンチ。(合掌)

「お願いします」という挨拶と共に私は家から持ってきたモノを先生に見せ
「これ、手術中使ってもいいですか?」と尋ねた。

先生は一瞬驚いたが許可してくれた。
私が恐怖に打ち勝つために持ってきたモノ、それは

イヤホン

麻酔をするものの、感覚が麻痺する箇所は小さく、顔にマスクをつけるため視界も遮られる。
そんな目隠しプレイに私は耐えられない。せめて、せめてMUSICの力を借りてもいいかい?

この日のために用意したセットリストはマキシマムザホルモン一択。
ホルモンの過激な音楽に、自分に起こるすべての衝動を巻き込み
訳が分からないうちに親知らずが抜けている、という手はずだ。

手術開始と共に流れ出すホルモン。
いい。
最初の麻酔は少し痛かったがこの爆音ホルモンが気を紛らわせてくれる。
いいぞ。
そしてどうやら一本目の歯が抜けたらしい。
先生が「大丈夫?もう一本抜くけどいけそう?」
と聞いてくれたので私は迷わず首を縦に振った。

二本目が始まった。
この調子で頼むぜホルモンの兄貴!

厳選したホルモンのセットリストが終わると、
設定したリピート機能でもう一周同じプレイリストが再生される予定だった。
しかし、耳に入ってきたのは

とーてーも大事なーキーミーの想いはー
無駄になーらなーい世界はー廻るー

これは…紛れもなく昨日ヘビロテしていたperfumeのポリリズム…!!!
なぜお前たちがここにっ!今じゃない!立ち去れ!ここは君たちの来るところじゃない!

しかし何故かリピート設定で永遠に終わらないポリリズム。


その時、先生が私の顔を抑える手にも力が入った。
恐らく今、あのお茶目な足のヤツ(ラスボス)をぬいているんだろう。

口を広げられる感覚、メスが入る感覚、歯を引っこ抜く感覚。
痛くないだけで全部わかる。そこに加わる爽やかなポリリズム。
親知らずVS先生の戦いはクライマックスに。

独特のリズムのポリリズム。
私を押さえつける先生の手。
痛い痛い痛い。
引っ張られる歯。
迫りくるポリリズム。

ポリリズムポリリズムポリリズムポリリズムポリリズムポリリズムポリリズム

とまらないポリリズム涙



前日までヘビロテしていた曲が一瞬でトラウマの一曲に。

親知らずを抜くことがどうしても怖い人はイヤホンも装着が可能か一度聞いてみるといいと思う。
その際はプレイリストとリピート設定をしっかり確認してほしい。

にほんブログ村 その他日記ブログ アラサー女性日記へ

参加してます。

コメント

  1. いでかみ より:

    タコさんウインナーみたいな親知らず
    絵がかわいい

タイトルとURLをコピーしました