花嫁サイコパス化

音楽と共に新郎新婦が入場してきた。
純白のウエディングドレスに包まれたマミは本当に綺麗だった。
隣に立つ旦那様の穏やかな笑顔からは、優しさが滲み出ており
緊張と嬉しさを混ぜた顔で歩き始めた二人のあとには幸せという名の花が付いて回り、
その姿はまるでおとぎ話から出てきたかのような……

いけない、うっかりポエミーになってしまった。
このままだと森の動物達がカップケーキを焼いて木々が歌い始めるところだった。

入場や挨拶が落ち着き、コース料理が始まると、
あやぬんが酒の注文が可能なことに気が付いた。
なんと。結婚式でアルコールを頂ける日がやってくるとは…。
しかし今日は華やかな日で、周囲にはこれまた華やかな女性たちが座っている。
とりあえずビーr、ではなくカシスオレンジを頼んだ。

う、うまい。
学生時代ぶりに飲んだカシスオレンジは甘く、私は余計にアルコールを欲した。
コース料理が進むと出汁がきいたお茶漬けが出てきた。
私はやっぱりアルコールを欲した…。

披露宴後に送られてきた写真の私は、
どれもこれもおちょこととっくりを手に満面の笑みを浮かべている。
更にお茶漬けと、水と、景品で頂いたチョコラBBが映り込んでいる写真もあり
お前は披露宴に何をしに行ったんだと怒られてもおかしくない。


デザートが出てきて、花嫁をうっとり見つめながらコーヒーを啜っていると
左隣のあやぬんが「カップ小さいね」と言ったので
私は意味もなくそれを右隣りのひーちゃんに伝えた。
「あやぬんがコーヒーカップの大きさに文句つけとるよ」
世界でもっとも意味を持たない伝達内容大会があれば優勝を狙える。
ひーちゃんは「ふっ」と鼻で笑い、
私の正面にいた紀子は何も聞こえていないのだがにこにこしていた。
恐らくここにマミがいたら
「私もそれ思った!ケーキがこんなに大きいのにコーヒーがこの量だと~~」と
目を丸くして話に乗ってくるはずだ。彼女はいつも全力で対応してくれる。

そんなことを考えているうちに披露宴も終わろうとしていた。
司会の言葉に促され、一同は式場の庭に出た。
なにが始まるんだ?
参加者がざわついていると庭に面した式場2階のベランダから新郎新婦がひょっこり顔を出し、
菓子袋が入ったカゴを私たちに掲げて見せた。どうやらこれから菓子撒きがはじまるらしい。
まったく。やることが可愛いんだからもう。

キャッキャウフフの私たちが「落とさず取れるかな~」なんて呑気なことを言っていると
全員の掛け声と共に菓子撒きが始まった。








バスンッッ

最初の一袋が地面に落下した音を聞いた参加者は、目が点に。
菓子袋は落下の威力で、本来の軽さとは比較にならない攻撃力を纏い落ちてきた。


え、、え、こわっ

そう思う間もなくマミ達はとびきりの笑顔で菓子を投げはじめた。


っ、ちょ、、え、こわっ、あぶなっ、、


隕石のごとく降り注ぐ菓子爆弾を避けようと紀子は私を盾にし、
ひーちゃんは何かがツボに入ったらしくめちゃくちゃ楽しそうに笑っている。
あやぬんは、、、動じていない。最小限の動作で危機を回避してマミを見上げている。
マミは上から私たちめがけて笑顔で爆弾を投下し続けている。もはやサイコパスだ。

社会人になってからこの5人で旅行に行ったことがあった。
そこで5人が輪になって中心に置いたカメラをのぞき込むというアングルで写真を撮ったのだが、
できあがった写真は予想とは違い、
山に人を埋め、それを覗き込む極悪人たち
というタイトルがぴったり当てはまりそうな失敗作ができた。

その写真の中で影の出来具合的に一番悪そうな顔だったのがマミだったことを私はその時思い出した。
新郎も新郎でガチのフォームで投げている。非常に爽やかな笑顔で投げている。

そんな中、あやぬんが突然右手を高く挙げた。

次の瞬間、あやぬんは比較的大きめの菓子袋をひとつかみにしていた。

「「「…お~~~~~」」」

何が起こったか状況を呑み込めず、少し間があいたのち歓声が上がり
その場の誰もがあやぬんを称賛と尊敬の眼差しで見つめた。
そのミラクル鷲掴みが凄すぎて、新郎新婦も爆弾投下をやめた。
参加者だけでなく両家のご両親も感嘆の声をあげている。

「すごすぎん!?」
本人より興奮したのは私たちで、何が起こったかまくし立てるように聞くと彼女は
「え~、普通に手伸ばしたら掴めただけだよ~」と言った。
この女、計り知れない。

この菓子撒きのMVPはあやぬん、あんただよ。

ということで新郎新婦のお二人様、この度はご結婚おめでとうございます!!!!




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