先輩を助けたい一心で殺しかけた話

私には岩田さんという大好きな先輩がいる。
配属先の部署の先輩後輩として勤務した4年半、私は金魚のフンのように彼女の後をついていた。
何でもそつなくこなし、あらゆる部署に顔が利く岩田先輩。
私はそんな彼女に憧れ、仕事の進め方からコミュニケーション力まで全て手本にしていた。
めちゃくちゃ気持ち悪いことをいうと歩き方まで意識していた、、がこれは内緒の話である。

お互いメルカリにハマっていた時、給湯室にあったサランラップの芯を見て
「シンプルな筒です。保管状態がいいのですぐに使用できます。中古品にご理解頂ける方~~」
と突然言い始めた岩田さんに迷わず「送料込みで450円です」と補足したり、

「先輩~人事からきたあの書類もう提出しました~?」
という私の問いに
「あ、あれ?まだ何も書いてないよ、ゴミ箱に保管してる
と提出書類をゴミ箱から引っ張り出す岩田さんを見て爆笑したり
私たちはよく気が合い、とにかく仲が良かった。



さて、当時私達が勤めていた会社は、どんなに暑かろうが寒かろうが
雨と雪の日以外は毎朝外に出て朝礼と体操をするというルーティーンがあった。

その夏の日は、気温と湿気が共に高く、何もしなくても息苦しさを感じる程の暑さ。
朝礼後、諸に直射日光を浴びしんどそうな顔でだらだらと社内に戻っていく社員達。
私もそれに倣い今から隕石落ちてこねーかなーなんて考えながら席に戻ると
岩田さんがいないことに気が付いた。
朝礼の時には私の後ろにいたはず。。。

その時、ふらっとトイレに入る岩田さんが見えた。
足元がおぼつかない様子。

慌てて追いかけると岩田さんは明らかに熱中症だった。
「大丈夫ですか!待っててください!すぐお水持ってきますから!」
大好きな岩田さんが熱中症!やばい!とにかく、とにかく涼しくしないと!

私はすぐに応接室の札を「使用中」に切り替え、
エアコンを16度【強風】に設定
保冷剤に何故かティッシュペーパーを1枚乗せ簡易氷枕を作る
岩田さんをその部屋に放り込んだ。
そして自販機まで走って水とアクエリアスを1本ずつ買い、
ソファに寝かせた彼女の横に置き満足して仕事に戻った。

課長が一連の動きを察して「岩田さん、大丈夫かね」
と声をかけてくれる。
もちろん大丈夫です、なんてったって私が素早く完璧な対応をしたんだから✨
と思いながら「大丈夫だと思います」と答え朝の業務を始める私。
岩田さんはゆっくり休んでおる。


…結構休んでおられる。

全然出てこない。

…だんだん心配になってきた。

様子を見に応接室のドアを開けようとしたらちょうど岩田さんが出てきた。


ブルブル震えながら開口一番、
「殺す気か・・・」




全身震わせながら応接室から出てきた岩田さんはもはや冷気を纏っていた。
というか、応接室を開けた瞬間から一斉に冷気が溢れてきた。
これは、冷凍倉庫だ。
よくマグロが吊るしてあるやつだ。

そんなこと言ってる場合じゃない。
気分が悪くて起き上がれない岩田さんを
この即席冷凍倉庫に閉じ込め、
保冷材にティッシュペーパー1枚を乗せた”ほぼドライアイス”枕に寝かせ
ひえっひえのドリンク2本を横に置き…

自分の空回り具合に笑うことしかできなかった。

岩田さんはそんな後輩を気遣うように口角だけ上げ
引きつった笑顔でもう一度小さく「殺す気か」と言った。

あの事件は本当に申し訳ございませんでした。
皆さんは絶対にマネしないように。



この時は、次は私がこの応接室に閉じこもることになるなんて思いもしなった。
そして、あんな辱めを受けることになるとは思いもしなかったんだ。。。








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