乳房

あらすじ

妻と病室の窓から眺めた満月、行方不明の弟を探しに漕ぎ出た海で見た無数のくらげ、高校生に成長した娘と再会して観た学生野球…。せつなく心に残る光景と時間が清冽な文章で刻み込まれた小説集。表題作の他「くらげ」「残塁」「桃の宵橋」「クレープ」と名篇を収録し、話題を呼んだ直木賞作家の、魂の記念碑。

(「BOOK」データベースより)


第1刷発行1993年9月15日
講談社

ネタバレなし感想

★★★☆☆

初めての伊集院静さん。タイトルで選びました(爽)

妻の闘病生活を支える夫、行方不明になった弟を探した夜に見た無数のクラゲ、などの短編小説が5つ。離婚してから初めて成長した娘会う男を描いた「クレープ」が特によかった(;_;)

30年くらい前の作品なんですが、男性(特に中年以上)の不器用さ素直になれない部分は目に浮かぶようでした。いつの時代も変わらないもの、プライスレス。

話の数だけ主人公が変わりますが、どのお話もしっとり読めました。長編作品や重たい内容の本を読んだ後のお口直しにもちょうどいいサイズ感。

こういう短編小説独特の雰囲気、ふわっとした終わり方、掴みどころの無い核心。まじ乳房。

みどころ解説

ふとした場面のエモさ

突然巻き込まれた大事件!とか運命に抗う命がけの恋愛!みたいな話はありません。どの話も現実的で、誰かのワンシーンです。それは回想だったり、会話だったり、景色だったり。

それをここまでノルスタジックかつセンチメンタルに表現できるなんて…

私が(´ー`)イトエモシ・・・と感じた文章を2つご紹介しましょう!

【一つ目】

遭難した弟を探すためにボートに乗り、夜の海に出た主人公。祈る思いで探しますが、行方不明になってすでに十日が経過していました。やるせない気持ちに駆られているとボートの周りを漂う無数のくらげに気付きます。

海月は薄緑色に見えたり、あわい紫色になったり、銀白色になってボートの回りを泳いでいた。私はそれが、この海で死んだ人間たちの化身のように思えた。

引用:乳房「くらげ」P36より

海月といったら透明なふわふわの生き物を連想しませんか?どっちかと言えば「癒し」とか「可愛い」イメージありますよね。それがこの状況だと死の世界に通ずるどこか神秘的で無機質な存在に。

そんな海月を夜一人で乗ったボートの上から眺めるという場面。まるで自分もこの世とあの世のはざまにいる様な気持ちになります。

二つ目】

何十年ぶりに旧友に会うことになった主人公が、再会の地に向かう場面。同じ野球部に所属していた旧友に対し少し複雑な気持ちを持っていた主人公ですが、久しぶりに訪れた場所の変わりように驚き、夕陽の見せる景観に心が動きます。

立ち並ぶビルの群れが朱色に染まり、真下にある渋谷駅の周辺のネオンがポツポツと点り始めていた。それが夕陽の光と重なって波のように揺れて、坂下が水彩絵の具を流した水入れのように映った。

引用:乳房「残塁」P78より

いいっすねえ~~(´ー`)この後に続く内容はここではお話しませんが、やっぱり主人公にとってこの旧友との思い出はきっと綺麗なものだったんでしょうね(´▽`)

鮮やかな都会の色。これもお気に入りのシーンでした!

共通する男性像

収録されている短編小説は5つ。

全ての話に共通するのは「不器用な昭和の男性」という点。

現代を生きる一人の人間として「男のくせに、女のくせに」「男だから、女だから」がタブーなのは知っています。それを承知の上で言いたい。

も~~。男って本当に不器用なんだから┐(´д`)┌ヤレヤレ

ご清聴ありがとうございます。

だけどそんな不器用さがいい味出してんのよねこれがまた( ;∀;)

私が特によかったと思う「クレープ」ってお話がまさにそれ。前妻との娘に初めて会う男の話。中年のおじさんがただでさえ身近にいないような年頃の娘と、二人きりで会うというミッション。

若い女の子向けが喜びそうなお店を探して事前準備はしっかりしたのに、どうしても会話が続かず空回ってしまう。父親らしいことを何もできない、と情けなくなる半面、そもそも自分はちゃんとした父親ではないんだから、と開き直った…けどやっぱり虚しい。という男の心情がじれったい!笑

伊集院静と夏目雅子

この本のレビューを見ていて一番多かった意見がこの”伊集院静と夏目雅子”について。

ここで本のタイトルにもなっている「乳房」、どんな話か少し紹介します。

主人公は入院する妻を持つひとりの男。仕事も女遊びもそれなりに楽しみ、1度結婚もしている彼が面倒を見るのは、明るく振る舞いながらも日に日に弱っていく妻。周りに「らしくない」と言われても、不機嫌な顔をしながらも、彼は献身的に妻を支えます。妻の「たまには遊んできて」という気遣いに、気乗りしないまま友人と訪れたのはネオンサインが怪しく光るホテル街――。

男の弱さと妻の大きさ(乳房の話じゃないよ)が泣けるほど美しい話でした。

実際、作者の伊集院静さんは妻の夏目雅子さんを白血病で亡くされているそうで、この話はその闘病生活を書いたものだとか。あとがきや解説にはそれらしいことは書かれてないので本当かどうかはご想像にお任せです。

私は夏目雅子さんをよく知らないのですが、生前の映像を見るときっと彼女は作中に出てくるようなどんな時も愛らしく強い女性だったんだろうなと思いました。

言いたいことはたくさんあるんですけど、男と妻の愛情の深さ、性欲の行き場、病を前にしたときの無力さ、どれも丁寧に描かれていて素晴らしかったです。

終わりに~乳房~

5つの短編小説。1作目、2作目と女の乳房に接触するシーンあり。

そして3作目。…おっと?元野球部のおじさんが?同じく元野球部の友人に会いに行くことになって?ドギマギしているぞ…?これは?そういう?こと?乳房出てくるの?え?どうなんだい?

と余計な興奮をしてしまいましたがそんなシーンは微塵もありませんでした。

恥を知れ、私。

やっぱり短編小説の持つ不燃焼感、いいですねえ。短編小説だからこそ多くは語らないみたいなね。こういう本は是非、夕暮れ時に畳の部屋がある小汚いアパートなんかで読んでいただきたい。

そしてこの作品の感想を書くにあたって「乳房」と「おっ○い」以外の語彙を失ってしまったフォロワーさん達、普通に声出して笑わせてもらいました。ありがとう。お前らまじ乳房だよ。

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コメント

  1. いでかみ より:

    おっぱいをありがとう

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