ぎょらん

あらすじ

人が死ぬ瞬間に遺す、いくらのような赤い珠。口にしたものは、死者の最期の願いが見えるという―。十数年前の雑誌に一度だけ載った幻の漫画『ぎょらん』。作者の正体も不明ながら、ネット上では「ぎょらんは本当に存在する」という噂がまことしやかに囁かれていた。三十路のニート、御舟朱鷺は、大学一年のときに口した友人の「ぎょらん」に今も苦しんでいると語るが…。とある地方の葬儀会社で偶然に交錯する、「ぎょらん」を知る者たちの生。果たして「ぎょらん」とは一体何なのか。そして死者の願いは、遺された者に何をもたらすのか―。「R‐18文学賞」大賞受賞作家が描く、妖しくも切ない連作奇譚。

(「BOOK」データベースより)


発行:2018年10月30日
新潮社

ネタバレなし感想

★★★★☆

「家に帰ったら、リビングで朱鷺が暴れていた。」という書き出しで始まる物語に(これなんの話!?)と戸惑いましたが人名でした、朱鷺。笑

各章で語り手が変わる書き方に最初は戸惑ったけど、章が増えるにつれてストーリーや登場人物の繋がりが明らかになってきて面白かったです。友人のぎょらんをきっかけに引きこもりになってしまった朱鷺が変わっていく姿を、親になった気持ちで見守りました。笑

やっぱり人の死を扱うこの手の話はしんどいっすね( ;∀;)亡くなった人の気持ちが再びみたいなシチュエーション、辻村深月さんの”ツナグ”を思い出しました。あれも泣いたなあ。月島キラリみたいな(絶対違うけどこんな感じの)名前の子の話だけすごく覚えてる。ちなみに月島きらりちゃんは彼女です↓。視力40.5くらいありそう。

引用:公式ホームページ キャラクター相関図より

町田そのこさんっていえば「女のためのR18」文学賞のイメージだったから、なんだなんだエロ本か?どらどら楽しませてもらおうじゃないの、と思って読み始めた自分が恥ずかしい。全6章あって、見事に全章で涙腺やられました。ぎょらんの正体はもうちょっとひねりがほしかったかな?でもいい本でした!

ネタバレ解説

朱鷺の苦しみ

引きこもりになる前の朱鷺は独特の雰囲気や話の面白さ、知識の豊富さから、決して活発で輪の中心にいるタイプでもないにも関わらず人を惹きつけるような魅力を持っていました。しかし学生時代、親友の蘇芳が自殺しているのを発見し、変わり果てた姿の彼が残したぎょらんを食べたことで朱鷺は闇に閉じこもってしまったのです。実は蘇芳が自殺する前の日、朱鷺は彼から「話をしたい」と持ち掛けられていました。しかし、一緒に目指していた大学を蘇芳だけ落ちてしまったことの妬みの言葉をよく浴びせられていた朱鷺は、そんな蘇芳にうんざりして断っていたのです。あの時、蘇芳に会っていれば彼は自殺などせずに済んだかもしれない。ぎょらんには、蘇芳の朱鷺に対する恨みや憎しみが詰まっていました。そこから彼の苦しみはスタートしました。

親友の自殺の原因

学生時代、蘇芳が好きだった女の子が、朱鷺を好きだと言ったことから徐々に二人の間には嫌な空気が流れるようになっていました。(これまた厄介なのが、その女の子は蘇芳の気持ちを試したくて朱鷺を好きだと言ったんです。)(そしてこの女の子も色々あって死んでしまいます。)大学受験では、朱鷺は受かり彼は落ちてしまいます。大好きな親友なのに、妬ましくてたまらない、そんな自分が醜くて仕方ない。しかし彼は当時付き合っていた彼女に、俺はあいつが好きなんだ。だから自分を変える努力をしないとだめだ。と言っていました。蘇芳は朱鷺を恨んでなどいなかったのです。蘇芳が自殺をした原因ははっきり書かれていませんが、元彼女の「蘇芳くんは、醜い自分の心が許せなくて憎くて溜まらなかったんだよ」というセリフがあります。まっすぐな蘇芳くんは、朱鷺の知らないところで必死に自分と戦っていたんですね。そして耐えられなくなり自死を選んだと。

各章のまとめ

全6章から成るこの物語、どの登場人物も「生」と「死」を身近に経験している。全章泣いた。私も大学時代に母親を病気で亡くしているんですが、敏感な空気とか葬儀場の雰囲気とか、遺族控室の重さや”強くならなきゃ”っていう決意とか全部蘇ってきました…

  1. ぎょらん 朱鷺の姉、華子が不倫相手を事故で亡くす話
  2. 夜明けのはて 元保育士の喜代が、旦那の喬史を亡くす話
  3. 冬越しのさくら 葬儀屋の相原が、大先輩のサクさんを亡くす話
  4. 糸を渡す 学生の美生が、ボランティア先老人ホームの茂子さんを亡くす話
  5. あおい落ち葉 小紅が、親友の葉子を亡くす話
  6. 珠の向こう側 朱鷺と華子が、母親を亡くす話

…当たり前だけど「~を亡くす話」のオンパレードになった。書き出さない方がよかったne(゚∀゚)

相関図

私の実力だとこれだけしか書き出せなかったけど、読んだらもっと色々あるんすよ!というより私がこれ作ったことによって作品の良さぶち壊してる気がしてきた。とりあえずもう黙って読んでほしい。

ぎょらんの正体

結論から言えばぎょらんの正体は「ぎょらんを見つけた人が自分の想像で作り出したもの」でした。死者を目の前にして感じる無力、後悔、この人はこう思っていたに違いない、こうしたかったに違いない、という想像力の結晶が「ぎょらん」として目の前に現れていた、と。だから、ぎょらんは死者の気持ちでも思いの結晶でもなんでもなかったんですね。

このことを知って朱鷺は「こマ?俺って自分で作り出した幻に取りつかれて引きこもってたの?引きこもって家族に迷惑かけてたの?」と衝撃を受けます。そして、その事実を認めたくない朱鷺は「違う!」と怒鳴ってその場を飛び出してしまいます。

急に怒鳴る人怖いね

「ぎょらんの正体を教えてくれ」って言われから「それはあなたが作り出したものです」って答えたのに「違う!!!」って怒鳴られるの理不尽で草。

しかし。。。物語のラストで、朱鷺の母もぎょらんを見たことがあるという。それは旦那(朱鷺の父)のぎょらんで、握りしめていたら保険金の存在を教えてくれたと。自分の想像力だけではなく、死んだ旦那しか知らない情報をぎょらんは教えてくれたのです。もうこうなったらfantasy。だがそれでいい。

終わりに~ぎょらんとは~

親友の死に、ぎょらんという幻覚が見えてしまうほど後悔し、苦しんだ朱鷺。死人の恨みつらみが凝縮された「ぎょらん」はおぞましい存在でした。でも、物語の後半で「幸せな気持ちにさせてくれるたまご」が出てきます。これは死人の優しくて感謝の気持ちが凝縮された珠だそう。どちらにせよ、文中に出てきた「死んだ人の想いは、生きてる側の想像でしかない。死んだ人に繋がりを求めてもそれは自己満足にしかならない。」というセリフが響きます。

ぎょらんとは生きている人を大切にしよう、生きているうちに向き合おうと思わせてくれる珠だと思います。

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